群青逃避
カバオです。
高校の時に体育祭ってのがありましてね。
2日間丸々授業が無いんですよ。
その代わり、全員が3種類のスポーツの中から1つを選んで、他のクラスや学年とトーナメントをしなきゃならんのですよ。
あれはわたくしが3年生の時なんですがね。
サッカーを選んだんですよ。
…選ばされた、の方が正しいですが。
同じクラスの運動ができる男子はほとんどサッカーを選ぶんですね。
そのせいもあって、経験者は少なかったんですけど、あれよあれよと準決勝まで勝ち上がったんですよ。
ここまでくると相手クラスも強いんですね。
試合は拮抗して最後はPK合戦に。
1人ずつ出て行ってボールを蹴るんです。
その時はサドンデスルールを取ってまして、自チームが外して敵チームが入れたら、相手の勝利。
逆パターンもまた然りって感じで。
皆どんどんゴールしていくんですよ。味方も敵も。
手がびちゃびちゃになってくのが分かりましたね。
僕はまだ蹴ってないんです。
というか体育祭中パスするくらいで、ドリブルやシュートなんかしませんでした。
恐怖でしたね、ボールは敵でした。
勝負はお互い残り2人ずつになるまでもつれました。
そしてその時、ついに先攻の敵チームがシュートを外したのです。
応援に来ていた女子生徒達の悲鳴が耳に焼き付いています。
いや、学校行事でそんな激アツ展開いらんで…
チーム内でまだ蹴っていない僕ともう1人のモリ君はお互い目を合わせませんでした。
ここで入れれば勝利ですが、外すととんでもない空気にピッチが包まれます。
あの時一歩踏み出す勇気が欲しかった。
博打や逆境を楽しむ精神が欲しかった。
しぶしぶ出て行ったモリ君のシュートはゴールネットを揺らしました。
ありがとうモリ君。
ありがとう神様。
そしてさようならカバオ。
お前はお腹が空いて森で立ち止まって泣くだけの生き物さ。
カバオ
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