ある朝起きたらアルマジロ
になっていた。
私カバオではなく
弟が、である。
そうなると
決まって妹はハゲワシになり、
四畳半の部屋を旋回するのだ。
朝から賑やかで愉快じゃあないか。
そら、コンペイトウだよ。
2、3粒ほど透明な瓶から取り出して天井に向かって投げる。
朝はしっかり食べなきゃあ、お昼までもたないからね。
さて
弟妹が変体するということは、めでたい日が訪れたということだ。
実に1年近くは待ったことになる。
米の研ぎ汁の様な色の冷蔵庫から、ケーキを取り出し
丸テーブルに置いた。
ほら座って、食べるよ。
アルマジロの硬く丸まった背中にハゲワシが止まり、
ビー玉の様な両目をぱちくりさせている。
新八柱は豪雨。
温帯低気圧に憧れた水蒸気が、我が物顔で街を闊歩する。
窓の外が荒れていれば荒れているだけ、心の中はワクワクする。
こんなにも素晴らしい日にもってこいの天気模様だ。
口の中を生クリームだらけにしたアルマジロとハゲワシは嬉々としている。
そしたら今日はどこへ行こうか。
意気揚々と外出の準備をしていると、玄関の錠が開きツキノワグマが入ってきた。
母さんだ。
クマは目を真っ赤に腫らし、持っていたビニール袋を開ける。
最寄りのコンビニで買ってきたのだろう。
「ほぅら、あんたらの好きな金平糖っちゃい!」
「母ちゃん、さっき食べたばっかよ」
ハゲワシがそう言うと、ツキノワグマはフンガフンガ鼻を鳴らして笑った。
アルマジロはコロコロ畳の上を転がり、母の足元に辿り着く。
まだお腹が減っているのだろう。
「朝は食べなきゃいかんちゃねぇ!」
朝からここまで賑やかな家族は他にあるだろうか、いやない。
羨ましかろう。
妬ましかろう。
殺伐とした現代日本社会において、家族の無償の愛が欲しかろう。
純粋な愛が、温もりが、安らぎが、煌めきが、瞬きが。
欲しいかい?
欲しいと思う、恥ずかしい事じゃない。
当たり前の権利だよ。
幸運極まりない事に、ちょうど今なら1つだけ枠があるんだ。
入りたいかい?
いいよ。
そしたら君はこれからバクだ。
僕たち家族の大黒柱的役割になるね。
毎晩、お土産に金平糖を買ってきてくれれば尚嬉しいな。
よろしくね、父さん。
カバオでした。
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